日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
Print ISSN : 0915-5988
ISSN-L : 0915-5988
症例
TS-1による化学療法と温熱放射線療法が著効した後発頸部リンパ節転移の1例
柴崎 麻衣子光藤 健司岩井 俊憲玉井 直人大原 良仁光永 幸代渡貫 圭廣田 誠藤内 祝
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 22 巻 2 号 p. 69-73

詳細
抄録

口腔癌の頸部リンパ節転移の制御は予後因子として非常に重要である。筋肉,骨,粘膜,皮膚のような周囲組織への浸潤が認められた場合には,頸部再発を避けるために拡大頸部郭清術が必要とされる。われわれはTS-1による化学療法と温熱放射線療法が著効した舌骨に近接した後発頸部リンパ節転移の1例について報告する。
40歳代の女性が右側舌の潰瘍を主訴に当科を受診した。患者は右側舌部分切除を受けたが,術後6か月目に舌骨に近接した同側の頸部リンパ節に転移を認めた。咽頭粘膜や舌骨の切除を含めた拡大手術を避けるために,われわれは術前治療としてTS-1による化学療法(100mg/日,計2800mg)と温熱放射線療法(2Gy/日,計40Gy,RF誘電加温:計4回)を施行した。CTによる治療効果判定はCRであった。患者は拡大頸部郭清術を回避し保存的頸部郭清術を受け,転移リンパ節は病理組織学的にCRが得られた。術後1年1か月経過した現在,頸部再発を認めていない。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
前の記事 次の記事
feedback
Top