日本消化器外科学会雑誌
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症例報告
長期生存が得られたKrukenberg腫瘍合併Meckel憩室癌の1例
石上 俊一矢澤 武史大江 秀明北口 和彦浦 克明平良 薫吉川 明田村 淳馬場 信雄白瀬 智之
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2010 年 43 巻 6 号 p. 654-660

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抄録

 患者は69歳の女性で,2004年11月の卵巣腫瘍摘出術の際に,回腸末端から約70 cmの腸間膜対側に充実性腫瘍を伴う径2 cmのMeckel憩室を指摘された.右卵巣腫瘍,憩室腫瘍とも中分化型腺癌であり,いずれも免疫組織学的検査でサイトケラチン(以下,CK)7(−),CK 20(+)であることから,Meckel憩室癌の卵巣転移と診断された.ムチンコア蛋白(以下,MUC)の免疫組織染色でMUC 1(+),MUC 5AC(+)であったがMUC 2の発現がみられず,迷入した異所性組織が癌化したものと考えられた.腹水細胞診陽性であり,術後TS-1/cisplatin(以下,CDDP)併用療法を施行した.腹膜再発があるが,患者は初回手術から4年半を経過した現在も生存中である.Meckel憩室に発生した腺癌の文献報告は,1950年以降 国内外で46件あるが,卵巣転移合併症例はなかった.本例はMeckel憩室の異所性胃癌であった可能性が高く,抗癌剤治療が奏効し長期生存が得られたと推察された.

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