1992 年 25 巻 3 号 p. 756-762
80歳以上の高齢者および35歳以下の若年者胃癌を対象として臨床病理学的特徴と手術成績を比較検討した.5年ごとに両群の頻度をみると, 若年者群では増加傾向を示さないが, 高齢者群では最近の5年間で著明な増加を示した.臨床病理学的には, 高齢者は早期癌が19%と少なく, 進行癌は2型の癌が35%と多く, 4型は少なかった.手術術式はR1郭清, 胃亜全摘が多く, リンパ節転移は高齢者群でn1 (+) が多かった.組織型は分化型が77%と多くを占め, 若年者群では未分化型が88%であった.高齢者の早期癌は隆起型を主体とする分化型を示すのに対して, 若年者では陥凹型を中心とした未分化型であった.胃内の早期癌の多発病巣は高齢老に多かった.他病死を除いた高齢者の治癒切除例の5年生存率は63.3%で若年者の81.3%と比較し不良であった.死因をみると高齢者では他病死が多いのに対して若年者では癌死が多くを占めた.