2017 年 50 巻 2 号 p. 95-103
目的:教室における下部直腸・肛門管腺癌の鼠径リンパ節郭清(inguinal node dissection;以下,INDと略記)症例の治療成績を明らかにする.対象と方法:1992年から2009年までの,腫瘍下縁がPまたはEの下部直腸・肛門管腺癌手術症例の内,INDを施行した16例(同時性転移7例,異時性転移9例)を対象とし,術後長期成績について検討した.結果:術後合併症はリンパ漏を13例(81.3%),surgical site infection(SSI),下肢の浮腫をそれぞれ3例(18.8%)認めた.平均在院日数は27日だった.術後補助化学療法は6例(37.5%)に施行された.同時性転移7例の5年無再発生存率は28.6%,5年全生存率(overall survival;以下,OSと略記)は28.6%だった.異時性転移9例の初回手術後から鼠径リンパ節転移までの期間は中央値11か月で,IND後4年以内に全例再発を認めたが,5年OSは33.3%だった.IND後の再発例は13例(81.3%)で,初回再発部位は骨盤内が3例,肺,肝臓,対側鼠径リンパ節,大動脈周囲リンパ節,皮膚がそれぞれ2例だった.結語:鼠径リンパ節単独転移を伴う下部直腸・肛門管腺癌に対するINDは,長期生存の可能性もあり施行する意義があるかもしれないが,遠隔再発率は高くIND後の集学的治療の開発が必要であると考えられた.