日本臨床細胞学会雑誌
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市販試薬を用いた高粘稠性検体および血性検体のための細胞診標本作製改良法
永宗 恵子西山 みどり沼上 秀博林田 俊樹松井 武寿
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2012 年 51 巻 3 号 p. 169-177

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抄録

目的 : 良好な細胞診標本を作製することの難しい高粘稠性検体と血性検体の処理法を改善する.
方法 : 遠心分離できない高粘稠性検体に検体量の 10%のサイトキープIIを添加し, 再遠心後に中間液層と沈渣のそれぞれをスライドグラス間ですり合わせて標本を作製した. 血性検体には沈渣に 5%リンス液加生理食塩水を約 10∼50 倍加え, 再遠心後, 標本を作製した. これらの方法で作製した標本と日本臨床細胞学会細胞検査士会 (JSCC) 法や未溶血法で作製した標本により診断した結果を比較した.
成績 : 粘稠性検体 6 例をサイトキープ法で分析したところ, 全例で集細胞量が多く良好な染色性を示す標本を作製できた. その結果, JSCC 法で判定不能であった 5 例の判定が可能になった. 一方, 血性検体 30 例をリンス法で分析したところ, 未溶血法に比べ背景清浄, 細胞変性のない標本を短時間で作製できた. その結果 7 例で細胞診所見の改善が, 4 例で細胞診判定結果の改善がみられた.
結論 : 新しい細胞診処理法により, 高粘稠性と血性検体の標本の質を改善することができた. 両方法とも迅速処理可能で細胞診の診断率向上に役立つと考える. 今後, 多数例を対象にした研究を計画し, 両法の有用性を確立したい.

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© 2012 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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