日本臨床細胞学会雑誌
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陽性 (悪性) にとられやすい乳腺の良性疾患
腺腫
伊藤 仁宮嶋 葉子梅村 しのぶ安田 政実長村 義之
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2003 年 42 巻 2 号 p. 155-161

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抄録

目的:乳腺に発生する腺腫についての細胞学的検討を行った.
方法:組織学的に典型例と考えられた乳頭部腺腫3例, 管状腺腫2例, 乳管腺腫3例を対象とし, その穿刺細胞診標本を用いて細胞学的特徴について検討した.
結果:腺腫は結合性が強く散在性細胞はほとんど認められなかった. 乳頭部腺腫では, 硬化性腺症でみられる楔状細胞集塊や上皮過形成に類似した間質を伴わない乳頭状細胞集塊などが認められた. 前者には筋上皮細胞が観察されたが, 後者では筋上皮細胞が明らかでなく, 乳頭腺管癌との鑑別が困難であった. 管状腺腫は線維腺腫の細胞像に類似していたが, 背景にみられる裸核細胞は少なかった. また, 上皮細胞として, 乳管由来と考えられる比較的N/C比の高い細胞集塊と末梢の小葉内細乳管上皮細胞に類似した細胞集塊が認められた. 後者の細胞は豊富な細胞質を有し, N/C比は低く, 柔らかい微細クロマチンが特徴であり, ときに微小な管腔内に分泌物が認められた. 乳管腺腫は, 基本的には間質を伴う細胞集塊で出現する乳管内乳頭腫の細胞像を呈していた. 乳頭腫に比べ管腔構造が目立ち, しばしば管腔内部に分泌物が充満していた. また, きわめて高度の核異型を伴うアポクリン化生細胞がみられる症例があった.
結論:細胞診における腺腫の推定診断は困難であるが, 結合性, 発生部位, 細胞の出現パターン, 組織像の多様性を認識することにより, 誤陽性を防ぐことが可能と考えられた.

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