日本臨床細胞学会雑誌
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免疫細胞化学的検索を併用した穿刺吸引細胞診が診断に有効であった乳腺原発悪性リンパ腫の2例
塚本 孝久大田 喜孝伊藤 園江中野 祐子大田 桂子楳田 明美伊藤 裕司中村 康寛
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1997 年 36 巻 5 号 p. 526-530

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抄録

乳腺細胞診において, 免疫細胞化学的検索が診断に有用であった乳腺原発悪性リンパ腫2例を経験したので報告する.症例1は78歳女性.症例2は44歳女性で, いずれも乳房腫瘤を主訴に外科を受診. 2症例の穿刺吸引細胞診における腫瘍細胞は好中球と同大か, それよりやや大きく, 結合性を欠き, 核は円形~ 楕円形でN/Cが高く, 一部にcleavedな形状を認めた.May-Giemsa染色では好塩基性の細胞質と微細な核クロマチン構築を認めた. 以上の細胞所見より悪性リンパ腫を強く疑ったが, 低分化腺癌などとの鑑別が必要と考えられ, 免疫細胞化学的染色 (LCA, L26, UCHL1) を行った. 材料は症例1は穿刺吸引細胞診に使用した注射筒の洗浄液塗抹標本にて, 症例2では穿刺吸引塗抹乾燥標本と脱Papanicolaou標本を用いて行った. 結果は腫瘍細胞に一致して細胞表面に症例1ではLCAとL26に, 症例2ではLCAに陽性像を認め, 穿刺吸引細胞診の時点で悪性リンパ腫を積極的に推定することができた. 組織生検では症例1は非ポジキン悪性リンパ腫, びまん性, 大細胞型. 症例2は非ポジキン悪性リンパ腫, びまん性 (部分的に濾胞性), 中細胞型と診断され, いずれの症例にも化学療法が施行された.

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