日本臨床細胞学会雑誌
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子宮頸部Adenoid Basal Carcinomaその細胞学的特徴と組織学的鑑別
本邦第1例報告
中村 恵美子滝沢 雅美清水 敏夫塚田 浩教西沢 由理川口 研二木村 薫
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1995 年 34 巻 4 号 p. 651-656

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抄録

子宮頸部adenoid basal carcinoma (ABC) は, 1966年にBaggish, Woodruffによって, basal cell variantの扁平上皮癌として初めて記載された. 本疾患は細胞異型の弱いbasaloid cellが小型の充実性細胞巣を形成し, 部位によっては扁平上皮や腺上皮様分化やadenoid cystic carcinoma (ACC) 様構造を示す浸潤性病変である. 浸潤部の間質反応は乏しく, 脈管侵襲やリンパ節, および遠隔転移はまれであり, 予後は一般に良好である. また高率に扁平上皮内癌 (CIS) を合併する. これまでに英文で20例あまりの報告があるが, われわれが調べた限りでは, 本邦での報告は認め得ない. 今回, われわれは癌検診で発見されたCISを伴う60歳のABC例を経験した. 細胞診では, N/C比大でクロマチン増量の著明な小型の類円形ないし紡錘形細胞からなる重積性の細胞集塊がみられ, 一部に腺腔様構造もみられた. 細胞像からは, 腺異形成, 腺癌, 小細胞非角化型扁平上皮癌および腺様嚢胞癌が考えられた. 組織学的には皮膚の基底細胞癌 (BCC) に類似していた. 免疫組織化学的にも, CAM5.2が陽性であったが, epithelial membrane antigen (EMA), S-100蛋白, CEAはいずれも陰性であり, BCCと類似の所見を示した. また局所での浸潤が主体で, 転移はほとんどみられない点も皮膚のBCCと共通していた. これらのことによりABCとBCCは腫瘍発生のうえで類似性の高い腫瘍と考えられた.

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