日本臨床細胞学会雑誌
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蓄乳法による乳頭分泌物細胞診
乳管内乳頭腫と乳癌の鑑別点について
石井 保吉藤井 雅彦長尾 緑若林 富枝張堂 康司佐久間 市朗伴野 隆久萩原 勁加藤 一夫
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1989 年 28 巻 6 号 p. 830-834

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抄録

乳頭分泌物細胞診で常に問題となる乳管内乳頭腫と乳癌の鑑別点を明らかにするため, 各々10症例の蓄乳細胞標本を用い,(1) 標本の背景,(2) 標本上に出現している細胞集塊の大きさと集塊数,(3) 細胞集塊の形態として, マリモ状集塊および対細胞の出現頻度, 集塊の構築細胞層数,(4) 細胞個々の所見として, 核長径, 核形, 核小体数, 核小体の大きさについて検索し, 以下の結果を得た.
1) 血性背景は乳頭腫, 乳癌ともに全例に認められた.
2) 細胞集塊数に関して, 乳癌は乳頭腫に比較し2.5倍相当の量が得られた. 特に乳癌では30個未満の細胞からなる小型集塊が多く認められた.
3) マリモ状集塊は乳頭腫で50%, 乳癌で90%の症例に出現した. 一方, 対細胞は乳頭腫で60%, 乳癌では80%の症例に認められた. また, 細胞の構築層数については乳頭腫で平均2層, 乳癌で平均3.4層という結果が得られ, 良・悪性の問に明らかな差が認められた.
4) 細胞個々の所見については, 面庖型を呈する乳癌を除くと, 乳頭腫と乳癌との問に顕著な差は認められなかった.

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