日本臨床細胞学会雑誌
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授乳期乳腺にみられたClinging Carcinomaの穿刺吸引細胞診
田村 元岩崎 琢也斉藤 純一飯島 仁川村 隆夫井上 幸男熊谷 千晶上中 雅文
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1988 年 27 巻 6 号 p. 963-967

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抄録

乳腺のclinging carcinomaは導管上皮を置換するように増生し, 充実性増生を示さないことを特徴とする. したがって, 腫瘍の穿刺吸引細胞像も毎常みられる乳癌と異なることが想定される. 報告例は32歳の授乳期の女性で, 両側性原発性乳癌の症例で左側にclinging carcinomaを認めた. 右側はinvasive ductal carcinoma with a Predominant intraductal component (WHO) であった. 左側のclinging carcinomaの穿刺吸引細胞の塗抹では大型の腫瘍細胞が孤在性あるいは小さな集団としてみられ, 大きな集団を形成しないこと, 平面的に集籏し, 重積性を示さないことが特徴的であった. 摘出標本では腫瘍細胞の結合性は弱く, 導管の内腔に剰離, 脱落しやすく, 腫瘍細胞が乳頭分泌液中に出現する可能性の高いことが推測された. estrogen receptorはclingingcarcinomaが2.9fmol/mgp. 通常型が5.4fmol/mg p.であり, 免疫組織化学的にclinging carcinomaでは一部の腫瘍細胞の細胞質にCEA強陽性反応を認めた. なお, 対側のinvasive ductalcarcinomaではCEAは陰性であった.

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