いわゆる肺硬化性血管腫は, 肺癌検診に伴い遭遇する機会の増加が予測される. そこで細胞診の立場から本症の確定診断をうるための基盤として7例について手術で得られた腫瘤の捺印塗抹像からの細胞形態を病理組織学的対応において検討した. 本症の細胞診上の特徴像は,
(1) 乳頭状細胞配列を示す部分, 散在性平面的配列を示す細胞, 紡錘形間質細胞や形質細胞, 好酸球など慢性炎症性細胞と多彩な所見が認められた.
(2) 乳頭状の細胞集団は, 腺癌のそれと鑑別を要するが, 腺癌とは細胞集団および個々の細胞の小さいこと, 異型性のより低いこと, 細胞質内粘液空胞の認められないことが相違点である. 一方, 時に本症に細胞の大小不同性, 核内封入体のみられることがある.
(3) 散在性平面的配列を示す立方状細胞は, カルチノイド腫瘍と鑑別を要する. 核クロマチンの均等微細な点が相違するが, 柵状配列を示すことがあるので注意を要する.
(4) 過誤腫とは, 乳頭状細胞集団の所見は, 類似しているが, 軟骨細胞, ムチン様物質の存否で鑑別の可能性がある.
以上の検討により, 肺硬化性血管腫の確定診断としての細胞診がなされるべきものと考える.