日本臨床細胞学会雑誌
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早期子宮体癌における腹腔細胞診に関する検討
西村 庸子松浦 基樹玉手 雅人寺田 倫子郷久 晴朗岩崎 雅宏齋藤 豪
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2020 年 59 巻 3 号 p. 125-128

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抄録

目的 : 子宮体癌における腹腔細胞診の結果は 2008 年の FIGO 分類において進行期の決定に考慮されなくなった. 独立した予後因子になるとするいくつかの報告もあるが, 現在のところ腹腔細胞診と予後との関係については, 結論が得られていない. 今回われわれは, 術前 1A 期の診断で腹腔鏡下手術を行い, 術後病理でも 1A と診断された症例の腹腔細胞診に関して検討した.

方法 : 2014 年 7 月〜 2018 年 12 月に術前 1A 期の診断で腹腔鏡下子宮全摘, 両側付属器摘出術 (症例によっては骨盤リンパ節郭清) を行った 82 例について検討した.

成績 : 82 例のうち, 5 例 (6.1%) は腹腔細胞診が陽性であった. 5 例のうち, 1 例は脈管侵襲陽性であり, 4 例は脈管侵襲陰性で, その他のリスク因子も認めなかった. 5 例のうち, 2 例は術後化学療法が行われ, いずれも再発はみられていないが, 術後化学療法を行わなかった 3 例はいずれも再発を認めた. 腹腔細胞診が陰性であった 77 例の中で再発をきたした症例は 2 例あり, 1 例は肺転移, もう1 例は腹膜播種再発であった.

結論 : 今回の結果はフォローアップ期間も, 症例数も限定的なものではあるが, 低リスク子宮体癌であっても腹腔細胞診陽性であれば術後補助療法を施行した方が予後が改善する可能性が示唆された.

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