日本臨床細胞学会雑誌
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原著
著しく形質細胞への分化を示す甲状腺 MALT リンパ腫の穿刺細胞像
蒲 貞行廣川 満良延岡 由梨樋口 観世子山尾 直輝鈴木 彩菜高木 希小島 勝宮内 昭
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2013 年 52 巻 6 号 p. 507-517

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抄録

目的 : 甲状腺穿刺パパニコロウ標本で, 著しく形質細胞への分化を示す MALT リンパ腫 (MALT-EPCD) と橋本病の鑑別細胞像を検討した.
方法 : 隈病院で細胞診と組織診が実施された MALT-EPCD 7 例と橋本病 20 例を対象とした. 両病変の細胞診標本で形質細胞 (PC), 目立つ核小体を含む不整形核を有する小型∼中型の細胞 (ISN-PN 細胞) などの平均出現率, また PC と ISN-PN 細胞の平均出現率の和 ( [PC と ISN-PN 細胞の和] ), 山脈状集塊 (リンパ濾胞胚中心浸潤由来), LEL 集塊 (リンパ上皮性病変由来) などを検討した.
成績 : MALT-EPCD での PC 平均出現率は 24%, ISN-PN 細胞は 9%, 山脈状集塊 29%および LEL 集塊 43%. 橋本病での PC は 3% (最高 18%), ISN-PN 細胞は 10%で, 山脈状集塊と LEL 集塊はみられなかった.
[PC と ISN-PN 細胞の和] は, MALT-EPCD では平均 33%, PC 出現率が最低 (15%) の症例では 29%, 橋本病で PC 出現率が最高 (18%) の症例では 18%であった.
結論 : 橋本病と鑑別するための MALT-EPCD の細胞像は PC 出現率≧15%, かつ [PC と ISN-PN 細胞の和] ≧30%であった. また, 山脈状集塊や LEL 集塊は MALT リンパ腫を示唆する所見と考えられた.

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© 2013 公益社団法人 日本臨床細胞学会
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