景観生態学
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原著論文
アカテガニを指標とした都市公園緑地の景観構成要素の機能評価
稲飯 幸代四宮 隆司河口 洋一鎌田 磨人
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2014 年 19 巻 1 号 p. 57-68

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抄録

アカテガニは,汽水域や海域で幼生期を過ごした後,稚ガニへと変態して陸に上がり,森林等を生活の場とする.その生活史段階における環境利用特性を利用して,徳島市の都市公園内に存在する緑地,人工水路,石垣,水域―陸域との接続性といった景観構成要素の生息地としての機能を評価した.アカテガニは,1)都市公園内の森林沿いにある人工水路周辺を選択的に利用し,裸地状態の平地は全く利用しないこと,2)森林内では石垣の空隙を選択的に利用すること,3)人工水路では植栽や水路内の岩影を選択的に利用すること,4)放仔の際には,練り石で護岸された水際よりも,空石積みで護岸された場を利用していることが明らかになった.これらは,人工水路による水分供給機能と,森林の気候緩和機能がアカテガニの生息を支える上で重要であること,石垣や人工水路の植栽,岩が採餌を行う活動期のアカテガニの隠れ場所として重要であること,逆に“親水性”向上を目的として最近に改修された練石積み護岸はアカテガニの利用に適していないことを示す結果であった.人への修景・親水性のための構造物であっても,生物の生息環境の維持・向上に繋げられること,一方で,景観構成要素が持つ機能を様々な生物の視点から多面的に評価し,デザインに活かしていく必要があることが示された.

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© 2014 日本景観生態学会
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