日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YOS-19-3
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予防OS19
加齢性音声障害に対するVocal Function Exercise音声リハビリテーションの効果
間藤 翔悟
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抄録

日本の高齢化率は、2021年で28.9%であり、高齢者の割合は 増加の一途をたどっている。2021年において、65歳以上の高齢者のうち、収入の伴う仕事をしている者は30.2%、過去1年間の間に社会活動を行った者は51.6%と報告されており、高齢者が社会性を維持するためには、コミュニケーションの基本ツールである音声を維持することは非常に重要である。一方、発声器官である喉頭は、50歳以降に加齢変化が起こるとされ、声帯筋の萎縮や筋力低下などが生じると、音声障害を来す。具体的には、「声がかすれる」、「高い声が出ない」、「大きな声が出ない」、「声を出すと疲れる」、「声が弱々しくなる」といった症状を呈することが多い。このような声の加齢変化により、コミュニケーション能力が低下すると、対人交流や社会活動が制限され、孤立、不安、抑うつ状態を招く可能性や、活動範囲の狭小化により身体機能の低下を引き起こす可能性がある。そのため、加齢性音声障害に対して、適切な治療法を確立することは、コミュニケーション能力の改善にとどまらず、これらの二次障害を予防するうえでも、重要な課題であると言える。 耳鼻咽喉科領域の診療現場では、声帯萎縮に代表される加齢性音声障害に対して、声帯内注入術などの外科的治療と言語聴覚士による音声リハビリテーション (音声治療)が行われている。様々な背景疾患を抱える高齢者に対しては、低侵襲な音声リハビリテーションから開始し、音声改善が不十分な場合には外科的治療を追加することが推奨されている。本学耳鼻咽喉科音声専門外来においても、声帯萎縮に対する治療の第一選択は低侵襲な音声リハビリテーションとし、必要に応じて外科的な治療を追加する方針となっている。このように、治療強度を順に上げるという戦略は世界共通であり、高齢者にとっては現実的な対応であると考えられている。 本講演では、音声障害診療のなかでも加齢性音声障害を取り上げ、音声リハビリテーション手技のひとつであるVocal Function Exercise (VFE)の方法とその治療効果を、症例提示も含めて解説する。

【倫理的配慮】

杏林大学医学部倫理委員会の承認(承認番号; 828-01)を得て実施した。

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