日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YOS-12-3
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予防OS12
入院中から始める循環器疾患の予防介入
加賀屋 勇気
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抄録

本学会の一般演題テーマに目を向けると、サルコペニア、ロコモティブシンドロームや骨粗鬆症、転倒予防、またはスポーツ障害・外傷予防といった主として運動器に関連したテーマが目立つ。また日本予防理学療法学会設立の趣旨を調べると、「理学療法の目的を予防・治療・参加の3つに大別したとき、広く予防に関わる理学療法を研究する」とある。一方で本セッションがテーマとして掲げる内部障害、特に循環器領域は、治療と予防の境目が曖昧という点が他の領域とは少し異なる点と考えられる。しかしながら循環器理学療法において、「予防」は最重要の課題であり、それは高度急性期を含む入院中から始まっている。 代表的な循環器疾患である急性心筋梗塞を例とすると、胸痛を契機に搬送され、緊急でカテーテルによる治療 (PCI)を受けるのが一般的である。症状自体はPCIにより改善され、我々が患者の元を訪れるときには、「おかげ様ですっかり良くなりました」という言葉を聞くのが定番となっている。さらに神経系や運動器の障害ではないため、治療翌日には歩こうと思えば歩けるというのが実態である。しかし、急性心筋梗塞後は心破裂のリスクが一定存在し、無計画に動くことはそのリスクを高めてしまう。また症状がなくなったからといって入院前の生活を続けると、再度心筋梗塞を起こす危険性が高い。なぜならPCIは閉塞した血管を解放する治療であって、血管閉塞を来した根本的な原因の解除は行えていないからである。そのため急性期においては段階的な負荷を理学療法士が調整しながらADLを拡大することで心破裂といった危険な合併症の予防に努める。ADLの拡大がなされた後は、心筋梗塞の原因となる冠危険因子の解除、つまりは再発予防を見据えて、どの程度の活動量や運動負荷を日常的に行うべきかの指針を提示し、以降の退院後の生活 ・リハビリテーションに繋げていく。 本セッションでは、当院での取り組みを通して、一般的な急性期の循環器理学療法において重症化予防、また再発予防の視点を持って介入することの重要性について述べさせていただく。

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