日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-20-2
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予防ポスター20(中枢)
血液透析患者におけるオステオサルコペニアが抑うつ症状に与える影響:4年間の前向きコホート研究
吉越 駿今村 慶吾原田 愛永山部 早智長田 しをり松永 篤彦
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抄録

【はじめに、目的】

血液透析 (HD)患者において抑うつ症状は生命予後を規定する因子の一つであり、抑うつ症状の出現に関連する因子の把握は疾病管理上重要である。近年、骨粗鬆症とサルコペニアが複合したオステオサルコペニアという概念が提唱されており、地域在住高齢者を対象とした先行研究においてオステオサルコペニアは抑うつ状態と関連することが報告されている。一方でHD患者は骨粗鬆症やサルコペニアの有病率が高いことからオステオサルコペニアを高率に有することが予想されるが、その実態や抑うつ症状との関連は未だ不明である。本研究はHD患者におけるオステオサルコペニアが経年的に抑うつ症状に与える影響を調査した。

【方法】

外来HD患者127例403観測データを解析対象とした。骨粗鬆症は二重エネルギー X 線吸収法(DEXA法)にて橈骨遠位1/3の骨密度を測定し、WHO基準に従ってTスコアが-2.5未満であった者と定義した。サルコペニアの判定にはAsian Working Group for Sarcopenia 2019基準を使用し、オステオサルコペニアは骨粗鬆症とサルコペニアの両方に該当する者とした。また、抑うつ症状の評価にはCenter for Epidemiological Studies Depression Scale(CESD)の短縮版を用いた。解析はベースライン時から1年ごとに3年間 (最大4地点)、CESDを追跡評価し、一般化推定方程式を用いてベースライン時におけるオステオサル コペニアが経年的に抑うつ症状の変化に与える影響を調査した。

【結果】

全体の18.9%がオステオサルコペニアに該当した。対象者全体のベースライン時の抑うつ得点の中央値は7 (5-10)点であり、 4年間における経年的な変化は認められなかった(P=0.91)。また、オステオサルコペニアを有さない者の4年間での抑うつ得点に大きな変化は認められなかった (r=0.02, 95%信頼区間, -0.31‒0.34, P=0.91)が、オステオサルコペニアを有する者の抑うつ得点は上昇傾向 (r= 0.51, 95%信頼区間, -0.22‒1.24, P=0.17)であった。

【結論】

HD患者はオステオサルコペニアを高率に有していた。また、オステオサルコペニアを有するHD患者は経年的に抑うつ症状が出現する可能性が示された。HD患者の抑うつ症状を管理するために、骨粗鬆症やサルコペニアの評価の重要性が示唆された。

【倫理的配慮】

本研究はヘルシンキ宣言を遵守し、北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て(承認番号: 2017-026B-4)、注意事項の十分な説明を行い同意を得て実施した。

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