日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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フレイル予防
フレイル高齢者の入院初期6分間歩行距離200m 未満は、退院時のフレイルレベル悪化を予測する
入江 将考濱田 和美西村 満志平川 白佳岸本 英孝森田 康之前田 勇貴宮城 友豪
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p. 58

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抄録

【はじめに】

6分間歩行試験より得られる6分間歩行距離(6MWD)は、心肺機能の指標として用いられることが多いが、筋力・筋持久力・バランス能力・協調性・柔軟性を含む総合的な指標である。フレイルを有する高齢者は、急性期入院によってフレイルレベルが悪化してしまい、有害健康アウトカムを招いてしまう。本研究の目的は、フレイル高齢者における入院初期の6MWDと、フレイルレベル悪化との関連性を明らかにすることである。

【方法】

2017年6月~2020年4月の間で当院内科および地域包括ケア病棟に入院した65歳以上の高齢者のうち、スクリーニング(J-CHS)でプレフレイル以上と判定された者を適格患者とした。除外基準は以下の通りである:⑴全身状態などにより評価やリハビリテーションプログラムが実施不可;⑵入院前Clinical Frality Scale(CFS)⩾8;⑶生命予後が3ヶ月以内;⑷予定入院期間が7日以内、⑸生体電気インピーダンス法が禁忌。6MWDは、歩行が安定したタイミングにリハビリ室にて測定し、カットオフ値は200mとした。主要アウトカムは、退院時のCFSが6以上か否かとした。解析では、退院時CFS⩾6を目的変数、6MWD<200mを説明変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。年齢・性別に加え、急性期の各種臨床データおよびサルコペニア関連因子を交絡因子とし、各々の調整オッズ比を算出した(有意水準は0.05)。

【結果】

329名の適格患者の内、退院時CFSデータや入院初期の6MWD データが欠損していた12名を除いた309名が解析対象となった.年齢中央値は82歳(IQR:77-87歳)で、女性が約58%。地域包括ケア病棟期間を含めた在院日数中央値は33日間(IQR:22 - 55)であった。CFS⩾6で退院したのは76名(24.6%)で、初期6MWD<200mには146名(47.2%)が該当した。解析の結果、認知機能(MMSE)、栄養状態(GNRI<92)、疾患重症度で調整したモデルでは、6MWD <200mは有意な独立因子であった(調整オッズ比: 3.86、 95%CI:1.74-8.47)。サルコペニア関連因子である骨格筋指数、筋力、歩行速度で調整したモデルでも、有意な独立因子であった(調整オッズ比: 5.59、95%CI: 2.71-11.6)。

【結論】

元来、フレイルとは要介護の前段階の位置付けで、予防的意義の強い概念である。一方、CFS⩾6は要介護まで進展した状態を表しており、そのまま退院することはフレイルレベル悪化のスパイラル加速を意味する。急性期における予防理学療法として、そのような退院後のスパイラルを防ぐことは重要である。今回、6MWDがフレイル改善の可逆性に関連している可能性が認められたため、早期からの積極的な運動療法介入の必要性が改めて示された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に沿い研究計画書を作成し、当院の研究審査委員会(登録番号:2020-006)の承認を得ている。また、対象者全員に十分な説明を行い、同意を得て評価及びリハビリテーションを実施し、ヘルシンキ宣言に準じて倫理的配慮に基づき、データを取り扱った。

また、私の今回の演題に関連して、開示すべき利益相反はありま せん。

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