日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防一般口述3
舌圧測定時の舌骨上筋群の筋活動評価としての妥当性
村上 健上出 直人上野 いずみ神尾 真由
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p. 29

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抄録

【はじめに、目的】

舌圧は嚥下関連筋(舌筋群や舌骨上下筋群など)の筋力低下を示す指標とされ,サルコペニアによる摂食嚥下障害の診断基準案にも採用されている(Fujishima,et.al. 2019).舌圧測定時に,舌筋のみでなく舌骨上筋群の活動が関与している(Palmer,2008)との報告もあるが,舌筋と舌骨上筋群の筋活動の関連性がない(Lenius,2009)など,現時点で一貫した報告が得られていない.そこで本研究では,健常若年者と地域高齢者を対象に,舌圧と舌骨上筋群の筋活動量の関係性を調べ,舌圧測定の舌骨上筋群に対する評価としての妥当性の検証を行った.

【方法】

対象は,20歳以上の若年者19名(平均年齢21.7±0.6歳,女性8名)および65歳以上の高齢者18名(平均年齢79.6±5.8歳,女性10名)とした.なお,高齢者については,要介護認定がある,口唇運動障害がある,摂食嚥下障害の疑いがある,咬合に問題がある場合は対象から除外した.口唇運動障害と摂食嚥下障害の疑いは,それぞれオーラルディアドコキネシスとEAT-10を用いて確認した.対象者には,舌圧測定器を用いた,最大舌圧(Maximum tongue pressure:MTP)を測定したのち,オトガイ舌骨筋に表面電極を設置した.その後,測定したMTPの30%,60%,100%の努力で舌圧を発揮させた状態でオトガイ舌骨筋の表面筋電図(EMG)を導出した.なお,MTPの30%,60%,100%の発揮については舌圧測定器に接続したパーソナルコンピューターの画面にリアルタイムで発揮している舌圧の圧力曲線を描出して確認をしながら実施した.導出した各測定条件(30%MTP,60%MTP,100%MTP)におけるオトガイ舌骨筋のEMGは,Root Mean Squareにて処理した後,筋活動が安定した状態での1秒間の総筋活動量を算出した.統計解析は,オトガイ舌骨筋の筋活動量を従属変数とし,測定条件(30%MTP,60% MTP,100%MTP)を独立変数,年齢(若年者,高齢者)と性別を共変量とした反復測定分散分析をおこなった.なお,統計学的有意水準は5%とした.

【結果】

舌圧については,性差は認められなかったが,年齢による影響は認められ,高齢者は若年者よりも有意に低値であった.分散分析の結果,オトガイ舌骨筋の筋活動量は,測定条件において有意な主効果を認めたが,年齢と性別では主効果を認めなった.また,測定条件と年齢,測定条件と性別,における交互作用も有意差は認められなかった.すなわち,年齢や性別による影響はなく,測定条件がMTP の30%,60%,100%となるに従いオトガイ舌骨筋の筋活動が有意に増加したことが示された.

【結論】

舌圧を測定することで,嚥下関連筋である舌骨上筋群の機能も評価できることが示された.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2021-017).また,全ての研究対象者に対して,研究内容について書面および口頭による説明をおこない,研究参加について書面による同意を得て実施した.

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