2018 年 58 巻 2 号 p. 100-104
61歳男性.声の聞こえにくさ,物の見えにくさ,ふらつきにて第6病日に受診した.両側聴力低下とともに,見当識障害,眼球運動障害,体幹失調,深部反射の消失がみられた.頭部MRIのFLAIR画像にて両下丘を含む中脳蓋と両視床内側に高信号域がありWernicke脳症(Wernicke encephalopathy; WE)が疑われた.ビタミンB1補充療法開始後に聴力は急速に回復し,眼球運動障害と歩行障害も徐々に改善した.入院時の血清ビタミンB1低値にてWEと診断され,第39病日の頭部MRIでは異常信号は消退していた.本例におけるビタミンB1補充後の聴力低下と下丘のMRI異常信号の改善経過からWEの聴力低下の可逆性が確認された.