2013 年 53 巻 2 号 p. 104-108
症例は,歩行時のふらつきと複視で発症した62歳の男性である.失調性歩行と下肢の筋力低下をみとめ当科に入院した.胸部単純写真で左肺野に結節影をみとめ,経気管支肺生検で肺小細胞癌と診断した.抗Hu 抗体とP/Q型抗VGCC抗体の両者をみとめ,傍腫瘍性小脳変性症とLambert-Eaton筋無力症候群の合併例と診断した.症状出現から3ヵ月以内に放射線化学療法を開始し,腫瘍の縮小にともない小脳症状と下肢の筋力低下の改善をみとめた.一般に傍腫瘍性小脳変性症は癌化学療法の効果に乏しいとされているが,症状出現から早期に癌化学療法を導入することが傍腫瘍性小脳変性症の改善に有効であると考えられた.