生理心理学と精神生理学
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特定の語彙に対する注意の焦点化が意味的関連性によるN400減衰に及ぼす影響
中尾 美月宮谷 真人
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2001 年 19 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

N400が心内辞書の特定の語彙表象に対する注意の焦点化に敏感な成分かどうかを検討するために, 事象関連電位 (ERP) を測定した.12名の被験者に, 継時的に呈示される単語および非単語の中から, 特定の単語に先行された非単語を検出することを求めた.この課題では, 被験者は, 特定の単語が呈示されるまで, その単語に意図的な注意を向けていた.注意の二過程説によると (例えば, Posner&Snyder, 1975), 特定の単語に対する制御的な注意は, 心内辞書の対応する表象を活性化させ, その他の表象を抑制させる.もしN400振幅が心内辞書における活性化レベルを反映しているならば, 継時呈示された二つの単語間の意味的関連性に基づくN400減衰は, 被験者が特定の単語に注意を向け, その単語に活性化が限定されている場合には, 観察されないと考えられる.しかしながら, この予測を支持する結果は得られなかった.このような場合のN400は, 被験者の注意がある単語に焦点化されていない場合の減衰量と比較すると小さいが, 刺激が意味的関連性のある単語に先行された時の方が, 関連性のない単語に先行された時よりも小さかった.これらの結果は, N400が心内辞書への注意の焦点化ではなく, 語彙表象の先行文脈への意味的な統合に敏感な成分であることを示唆している。

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© 日本生理心理学会
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