本文は北海道・樺太産蜆科化石に就ての概括である。主として筆者が扱って來た標本を材料とし, 之に若干の補足を施し, 且之に從來諸氏に依り報じられてゐるものをも加へた。本文に示されてゐる如く, 總計12種を鑑別し, 其内譯はGeloina屬3種, Cobicula屬5種, Batissa屬4種である。地層別には, 中新統にCorbicula屬3種, 其他の9種は總て古第三系に産してゐる。古第三系にはGeloina屬やBatissa屬の如き南方要素を含み, 氣候の温暖であったことを示し, 之に對し中新絖にはGeloina屬やBatissa屬を含まず, 中新統は古第三紀に比し氣温が冷却してゐることを示す。