地質学雑誌
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論説
宮崎層群上部の石灰質微化石に基づく,鮮新世/更新世境界付近の海洋環境変遷
千代延 俊森本 隼平鳥井 真之尾田 太良
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2012 年 118 巻 2 号 p. 109-116

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抄録

九州宮崎地域に分布する宮崎層群高鍋層上部は,鮮新世/更新世境界を含むことから,後期鮮新世から前期更新世の北西太平洋の海洋環境変遷を明らかにするのに適した地層である.同時代の黒潮変動を明らかにするために,宮崎県高鍋町永谷川沿いに露出する,高鍋層最上部から産出する石灰質ナンノ化石と浮遊性有孔虫化石群集を解析した.特に,古環境代替指標として用いた石灰質ナンノ化石のReticulofenestra属,Coccolithus pelagicusおよび浮遊性有孔虫化石のGlobigerinoides ruber, Globigerinoides quadrilobatus, Globigerinoides sacculifer, Neogloboquadrina incomptaが認められるほかに,石灰質ナンノ化石のDiscoaster属が特徴的に産出する.これらの種から,鮮新世末まで黒潮の影響下にあり海洋が成層化する環境から,漸移的な移行期を経て,更新世の冷水塊などによる湧昇流が卓越する海域へと変化したことを明らかにした.

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© 2012 日本地質学会
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