Journal of Applied Glycoscience
Online ISSN : 1880-7291
Print ISSN : 1344-7882
ISSN-L : 1344-7882
第17回糖質関連酵素化学シンポジウム
Bacillus clarkii 7364株が生産するγ-Cyclodextrinに高い特異性を有する二つの酵素
中川 佳紀佐分利 亘山本 健高田 正保小川 浩一山本 幹男秦田 勇二中村 信之掘越 弘毅
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 57 巻 2 号 p. 121-129

詳細
抄録

好アルカリ性細菌Bacillus clarkii 7364株が菌体外に分泌するcyclodextrin glucanotransferase (CGTase)は,澱粉を基質としたとき,γ-cyclodextrin (γ-CD)を優先的に生成するγ-CGTaseである.また,本酵素(Cgt)をコードする遺伝子の約200 bases下流には,cyclodextrinase (Cda)をコードする遺伝子が存在する.本研究では,CgtおよびCdaの機能解析を行った.Cgtは至適pH 10.0の好アルカリ酵素であった.Cgtを1%(w/v)可溶性澱粉に作用させると,CD組成はα-CD<0.1%,β-CD 3.5%およびγ-CD 27.5%となった.Cgtおよび他起源のCGTaseのアミノ酸配列を比較したところ,Cgtではサブサイト+3,+2,-3および-7においてアミノ酸の欠失および相違が認められた.サブサイト+2に位置するAla223を三つの塩基性アミノ酸(His,LysおよびArg)に置換した変異体は,いずれも中性pHでのγ-CD合成比活性が向上した.これは,Ala223の塩基性アミノ酸への置換により,プロトン化した側鎖のアミノ基が基質と相互作用を示すことによるものと推察される.一方,Cdaはγ-CDのみに高い加水分解活性を示すcyclodextrinaseであった.さらに,Cdaはマルトトリオース単位で糖転移させる活性を保持していた.Cdaおよび他起源のCD分解酵素のアミノ酸配列を比較したところ,Cdaでは他起源のCD分解酵素が保持するNドメインが欠失し,C末端側が100アミノ酸以上長かった.CD分解酵素のNドメインは二量体形成に寄与するが,CdaはNドメインを欠失しているにもかかわらず,12量体を形成していた.これらの特徴は他起源のCD分解酵素では認められず,Cdaは新奇なCD分解酵素であることが示唆される.

著者関連情報
© 2010 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
前の記事 次の記事
feedback
Top