関西医科大学雑誌
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Micromonospora 株の胞子表面構造の研究
川村 義己
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1993 年 45 巻 3-4 号 p. 196-203

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抄録

ミクロモノスポラ株の代表株8株の胞子表面構造を電子顕微鏡により検討した結果,平滑(smooth type),疵状(warty type),星芒状(blunt spiny type)の3種類の表面構造が観察された.これらの特徴的な3タイプの表面構造は,一部の例外を除き培地の種類による影響は少なく,21-28日以上の培養後には安定した.光学顕微鏡下では殆ど形態的に区別のつかないミクロモノスポラ株では電子顕微鏡下での胞子表面構造は分類上の一つの基準となり得るものと考えられる.
次に,日本とウガンダで採集された土壌から分離されたミクロモノスポラ株278株につき表面構造を観察した.その結果,3地域からの分離株で平滑型と疵状の出現頻度はほぼ同程度で,高く,この両タイプで70-80%を占めた.これに反し,星芒状の出現頻度は低く,3-5%を占めるに過ぎなかった.典型的な3タイプ以外に,平滑型と疵状の中間型,疵状と星芒状の中間型の表面構造を示す株も観察され,全体の約10%を占めた.
胞子表面構造が平滑型,疵状,星芒状の株各2株ずつ,計6株のミクロモノスポラ株についてマウスに対する病原性を尾静脈接種により調べた結果,感染マウスの各臓器から菌は分離されたが経時的に菌数は減少する傾向があり,肉眼的には各臓器に変化はなく,死亡例もなかった.また,各臓器の組織切片の顕微鏡観察でも極めて軽微な炎症像が観察された例はあったが,著変は認められないことからミクロモノスポラ株にはマウスに対して病原性はないものと判断された

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