口腔病学会雑誌
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親子間における顎態パタン類似性の経年的変化に関する研究
本橋 信義
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1977 年 44 巻 4 号 p. 453-470

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抄録

長期間を要する形態形成において, 遺伝的影響は, その形態の部位あるいは形成の時期によって異なり, その表現型は成長期間をとおして変化することが一般に知られている。
本研究は, 親子の類似性という観点から, 顎顔面頭蓋の成長によるパタンの変化に対する遺伝的影響を明確にする目的で, 血族親子間の顎顔面頭蓋パタンの類似性を, 顎態パタン全体と顎態パタン構成要素各部の類似性との両面について検討した。
資料として, 子供の経年資料を含む22家族の側貌頭部X線規格写真286枚を用いた。これら側貌頭部X線規格写真上に17個の計測点を設定し, フィルモーション頭部X線規格写真分析装置によって座標値として読み取り, 得られた多次元時系列データから, 親子間顎態相互の類似度の経年変化を時系列類似曲線として把握し, 以下の結論を得た。
1) 顎態パタン全体の親子間類似性の経年変化については, 両親に対して子供の類似性が経年的増大を示し, その成長発育過程は, いずれか一方の親の影響を強く受けることが示唆された。
2) 顎態パタン構成要素各部の類似性の経年変化については, 各構成要素によって, 親子間類似性の経年変化には差異が認められ, それぞれが異なる遺伝的支配下におかれていることが示唆された。

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