積雪の挙動の研究には降積雪,融雪の数値モデリングが効果的であるが,降雪量分布や圧縮特性は時空間的に不均一性が強く,現実的な解を求めるのが困難な場合が多い.特に北陸地方は気温が高く,降水と降雪の分かれ目に位置し,湿雪による圧縮特性の変化も大きい.これらの挙動は広域にわたる観測事例が少なく,モデリングの障害となることも多い.本論文は,積雪の多層圧密数値モデルを構築し,観測点が比較的水平均一に分布する気象観測を用いて毎時の積雪深を算出し,観測積雪深との比較を行った.その結果,新潟県十日町では,雪の圧縮粘性係数の経時変化を考慮する必要性を示し,考慮しない場合は季節内平均で18%程度の過大評価となることを示した.また,長野県,福島県の山間部では積雪層が焼結あるいは霜ざらめ化が進行しやすいことを示唆した.さらに,新潟県南部と福井県の平野部から山間部にかけては降水降雪判定を正確に行わないと積雪深算定が困難であることと,それ以外の地域では気温が高いことによる圧縮粘性係数の低下が積雪深算定に大きく影響することを示した.