音声言語医学
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失語症者の音の誤りにおける自己修正の量的, 質的分析
春原 則子宇野 彰
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1996 年 37 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

本研究の目的は発語失行を伴う症例, 伝導失語, ウェルニッケ失語の3つの失語症タイプについて音の誤りの自己修正について検討することにある.結果は以下の通りであった.自己修正の量的側面では失語症タイプによる差は認められなかった.自己修正を行った発話の割合はタイプではなく症例によって異なっていた.発話の障害がより軽度の症例ほど正しく修正される割合が大きかった.一方, 自己修正の質的側面については, タイプによる相違が認められた.発語失行群は誤った音節で発話を中断し, 誤った音節のみを修正しようとする傾向を示した.伝導失語はやはり誤った音節で発話を中断したが, 修正は誤った音節を含む複数音節で行われる傾向を示した.ウェルニッケ失語は誤った音節で発話を中断せずに先へ進めてしまうことが多く, 修正は複数音節で行われる傾向を認めた.正しい単語をさらに修正したのはウェルニッケ失語のみだった.以上の失語症タイプによる相違は失語症それぞれの障害機序を反映させている可能性が考えられた.

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