音声言語医学
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最大エントロピー法による嗄声の分析
大森 孝一児嶋 久剛藤田 修治野々村 光栄
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1991 年 32 巻 3 号 p. 255-260

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抄録

音声の周波数分析において, 高速フーリエ変換 (FFT) は周波数分解能を上げるために分析区間を長くすると経時的変化をとらえにくい.一方, 最大エントロピー法 (MEM) は短い分析区間からでも優れた分解能が得られるスペクトル推定法で, 今回著者らは本法を用いて嗄声の周波数分析を行った.対象は正常音声1例, 気息性嗄声1例 (日本音声言語医学会の基準テープ) , 粗造性嗄声2例 (同テープ) , 臨床例から声帯ポリープ1例, および食道音声27例とした.正常例, 気息性嗄声例では, FFTによる場合と同様であった.粗造性嗄声の典型例および声帯ポリープ例では30Hz-50Hz間隔の周期的ピークが認められ, FFTよりも明確に粗造性嗄声の特徴をとらえることができた.さらに食道音声の分析でもMEMの方が優れており, 粗造性嗄声に類似した周期的成分が観察された.MEMは, 特に粗造性嗄声の分析に有用と考えられた.

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© 日本音声言語医学会
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