日本糖尿病理学療法学雑誌
Online ISSN : 2436-6544
抄録
運動処方 理論と実際
本田 寛人
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. 10

詳細
抄録

運動処方では,頻度(Frequency),強度(Intensity),時間(Time),種類(Type)といった「FITT」の原則に基づいてその内容を設定する.一般的には,中強度有酸素運動(歩行やジョギング,水泳など)を週3 回以上,1 週あたり150 分以上実施することを目標とする.筋力を高めるレジスタンス運動も重要で,8~12 回反復可能の負荷量で1~3 セット,上半身・下半身の筋肉を含んだ8~10 種類の運動(腹筋,ダンベル,腕立て伏せ,スクワットなど)を週2~3 回を目安に実施する.また,有酸素運動とレジスタンス運動は併用することが推奨されており,血糖コントロールや体重,最大酸素摂取量,筋力などの改善や近年注目されている筋内脂肪の減少などが期待できる. FITT の中でも,とくに運動強度は運動を安全かつ効果的に実施するために重要な項目である.一般的に中強度が推奨される理由として,長時間の運動実施が可能になりエネルギー消費量の増加が容易となることや,代謝機能関連の血液生化学データの改善が期待できること,運動中の危険因子(血圧上昇など)を抑えて運動が実施できることなどが挙げられる.一方,安全に運動を実施できるのであれば,強度を上げることに何ら問題はないと考えられる.心肺機能や筋力など様々な身体機能を向上させるためには,高強度運動も適度に取り入れることが望ましいため,運動経験者や高体力者,若年者などは,積極的に強度を上げることを検討する.また,代謝機能や運動機能の改善には十分な運動量を確保することが大切であるが,運動量は強度と時間の積で表されることから,強度を上げることで運動に割く時間を少なくすることができ,時間的制約が大きく十分な運動時間がとれない患者でも適切な運動量を確保できる. 当然,実際に患者に処方する際は,その病態に応じて指導する.とくに合併症保有者では,強度など運動内容の十分な検討が必要である.いずれにしても,患者に定期的なフィードバックを行い,活発な身体活動を主体的に行うことができるよう,心理学的側面も含めて支援することが肝要である. 本講座では,糖尿病患者における運動処方の理論と実際について,処方の原則と注意点,工夫点などを交えて解説する.

著者関連情報
© 2022 日本糖尿病理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top