2018 年 59 巻 5 号 p. 273-280
地震時に発生した地すべりのすべり面判定においては,ボーリングコアの性状観察や動態観測による判定が困難な場合がある.そこで本研究では,新たなすべり面の判定手法として,コア試料を用いた炉乾燥法による膨潤圧試験を行い,得られたデータ特性からすべり面判定の有効性について検討した.試料は,2008年岩手・宮城内陸地震により岩手県内で発生した主な斜面災害現場のボーリングコアである.試験結果より,①炉乾燥法により測定した膨潤圧は,初期含水比の影響を受けずに土が本来有する膨潤能力を評価できる,②膨潤圧が上下深度と大きく異なり,急増する深度はすべり面の可能性がある,③炉乾燥法による膨潤圧データは,すべり面を判定する際の定量的な指標の一つとして利用できる可能性が見いだされ,本試験方法の有効性が示唆された.