応用地質
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レンズの結像倍率式を用いた遠距離物体の寸法測定法に関する研究
氏平 増之飯塚 岳彦川村 洋平川北 稔
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2002 年 43 巻 1 号 p. 2-13

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抄録

地質調査等で, 目的の被写体が高すぎる, 遠すぎる, 危険で近寄れない場合には被写体のそばにスケールを置くことができない. しかし, フィルムスキャナや画像処理ソフトウエアが進歩し, ノンプリズム型測距儀が普及してきた今日では, このような場合でも被写体の寸法を画像を用いて測定することが可能と考えられる. 本研究では, レンズの結像倍率式を用いて被写体寸法を間接的に求めようとするときに必要な焦点距離別の撮影限界距離と画像のひずみを, 実測データに基づき検討した. 本論で明らかにした主な内容は以下のようである. (1) ±5%以内の被写体寸法測定誤差を許容すれば, 焦点距離f=100mm以上のレンズを用いることで300m遠方までの被写体寸法を測れる. (2) 画像のひずみは, 焦点距離f=100mm以上のレンズを用いた場合1.0~2.0%以下である. (3) 放射線の入った同心円状のひずみ補正用図形を撮影した後, 画像上の点のあるべき位置からの変位量と光軸からの距離の関係式を用いることで被写体寸法を補正できる. (4) ほかに簡便な方法がない場合にカメラと測距儀を用いて間接的に被写体寸法を測定しようとする本論の方法は有用である. このとき, 距離の正しい測定, 焦点距離が正確なレンズの使用, 被写体像の微小寸法の正確な測定を行うことが重要である.
本研究では, レンズの結像倍率式を用いて被写体寸法を間接的に求めようとするときに必要な焦点距離別の撮影限界距離と画像のひずみを, 実測データに基づき検討し, 撮影限界距離とひずみ補正法を具体的に示した. 本論で明らかにした内容をまとめると以下のようである.
1) 地質調査等でカメラを用いて被写体寸法を測定しようとする場合, 被写体寸法はフィルム上の被写体像の微小寸法をフィルムスキャナで測り, これに理論倍率を乗じて求める. このとき, スキャナによる微小寸法測定誤差と画像のひずみが目的とする被写体寸法測定誤差の主な原因になる.
2) 実測により被写体寸法測定誤差の95%信頼限界を計算し, レンズの焦点距離ごとの撮影限界距離を示した. ±5%以内の測定誤差を許容すれば, 焦点距離f=100mm以上のレンズを用いることで300m遠方までの被写体寸法を測ることができる.
3) 画像のひずみについて検検討し, f=36, 50mm等, 焦点距離が短いレンズを用いた場合に大きいひずみが現われることを定量的に示した. やはり焦点距離f=100mm以上のレンズを用いることでひずみを1.0~2.0以下の範囲内に抑えれる.
4) やむを得ずf=36, 50mm等短い焦点距離のレンズを用いる場合には, ひずみを補正することが必要である. 放射線の入った同心円状の図形を撮影した後, 画像上の点のあるべき位置からの変位量と光軸からの距離の関係式を用い, 被写体寸法を補正できる.
5) フィールドにおいて目的とする被写体の寸法を測定しようとする場合, 他に簡便な方法がないときにはカメラと測距儀を用いて間接的に測定しようとする本方法が有用である. ただし, 距離の正しい測定, 焦点距離が正確なレンズの使用, 被写体像の微小寸法の正確な測定を行うことが重要である.

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