心電図
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症例
てんかんに対してのキニジン治療で著明な徐脈,低血圧をきたした乳児の1例
松村 雄渡邉 友博中村 蓉子渡部 誠一
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キーワード: 小児, てんかん, キニジン
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2021 年 41 巻 1 号 p. 14-22

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抄録

キニジンは上室性頻拍の予防薬として知られているが,近年では抗てんかん薬としても使用されている.現在までにてんかんでのキニジンを使用した報告は少なく,特に副作用報告はほとんどない.症例は2歳男児,遊走性焦点発作を伴う乳児てんかん.様々な抗てんかん薬や脳梁離断術が無効であり,キニジンを導入した.血中濃度を頻回に確認しつつ,投与量を増加させていった.増量に伴い,けいれん発作は減少していった.フェニトインとの相互作用もあり,キニジン投与量は80mg/kg/dayで血中濃度は治療域を維持していた.キニジンを導入してから1年が経過し,胃瘻造設術で入院した際に徐脈と低血圧になり,生理食塩水の急速投与やカテコラミンの投与を一時的に必要とした.徐脈,低血圧時のキニジン血中濃度は治療域を逸脱していなかったが,心電図は著明なQT時間延長,徐脈となっており,低血圧もキニジンの影響と考えられた.抗てんかん薬としてキニジンを使用する際は,ほかの抗てんかん薬との相互作用で血中濃度が上がらず,多量投与が必要となる可能性がある.キニジンの副反応として低血圧が出現する前に,徐脈などの心電図変化が先行するとされており,薬物の血中濃度のみならず,心電図や血行動態の変化にも注意を払うことが肝要である.

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