2020 年 40 巻 2 号 p. 101-106
KCNQ1は,QT延長症候群(LQT1)およびQT短縮症候群(SQT2)の原因遺伝子として知られている.KCNQ1は電位依存性カリウムチャネルのαサブユニットをコードしており,KCNQ1サブユニットが4分子集まることで1つのKCNQ1チャネルを構成する.KCNQ1チャネルのもう1つの重要な特徴は,KCNEと呼ばれる機能修飾サブユニットにより,大きくチャネルのゲーティングが変わることにある.実際,心臓においては,KCNQ1とKCNE1が複合体を構成し,非常に遅いカリウム電流(IKs)を担うことが知られている.どのようにして,KCNE1がKCNQ1のゲーティングを遅らせるのかについては長年にわたって謎であったが,最近のvoltage clamp fluorometryなどの生物物理学的解析により,その特異なゲーティングメカニズムがかなり明らかになってきた.また最近,MacKinnonらによりクライオ電子顕微鏡によるKCNQ1の構造決定がなされ,ゲーティングメカニズムの完全解明に向けて大きく動き出している.これら最近の生理学的解析と構造情報について概説し,最後にSQT2変異によるチャネル機能亢進のメカニズムについて,構造と機能の情報をもとに議論する.