日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-O04-5
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一般演題(口演)
CRCは治療と仕事の両立支援の観点から治験参加患者に対する情報収集を行えているか
*難波 志穂子奥田 浩人黒田 智四方 賢一
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抄録

【緒言】近年、医学の発展に伴い、重篤な疾病に罹患し治療をしながらも仕事をする人が増加している。厚生労働省は「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表するなど関係各機関で体制整備を推奨している。被験者は、治験実施計画書の規定に従い入院や受診を行っており、通常診療を受ける場合と比べて様々な制約を余儀なくされる。ときに、CRCは被験者から依願退職・自営廃業を決断した報告を受けることもあり、彼らが治療と仕事の両立の観点から適切な支援を受けているか不明である。そこで、CRCが被験者に対して、仕事に関する情報を得て活かしているのかについて、診療録から調査した。【方法】 SMO担当治験を除外した2017年以降で治験参加している成人被験者100名の診療録を後方視的に調査した。調査項目は、がん/非がん、年齢、性別、職業情報、治験参加時保険、CRCが確認した仕事の情報について調べた。【結果】 調査対象者は、がん84名/非がん16名であった。被験者の年齢の中央値は65歳(範囲27-87歳)だった。男性は60名、女性40名だった。保険種別においては、国民健康保険、社会保険(健康保険)、後期高齢者医療制度の順番で多かった。カルテ上に職業の記載があったのは72名であり、CRCが職業や仕事の環境・状況に関する記載をしていたのは20名だった。そのうち、治験参加中に複数回の確認をしていたのは8名だった。複数記載として、職場復帰の相談を受け、医師とも業務内容を検討し、職場で留意すべき点、職場復帰後も規定来院ごとに職場での身体症状の変化を記載していた。また、病気が判明しすぐに離職した患者が2名いた。【考察】 今回、CRCが被験者の仕事に関わる情報を記録していたのは20%だった。周術期管理センターや入退院支援センター等の部署には職業記載欄があるため参考にしている可能性もある。今回の調査では、被験者が職場に報告し必要な配慮を求めたか、自営業者の転帰、院内の他部門との連携などの記載が殆どなく、CRCは両立支援の観点を持って対応しているかが課題と思われた。【結論】今回の調査によりCRCが両立支援に関わる意義の認識向上、診療録の記載欄の整備に加え、院内の両立支援の協力体制整備・周知についての改善の余地があることが判明した。

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