日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S35-3
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シンポジウム
Fantastic Four時代における心拍数の管理とは~β遮断薬・イバブラジンの活用~
*鈴木 敦
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抄録

心拍数(HR)は交感神経や副交感神経などの自立神経の活性や、カテコラミンなどの神経体液性因子に制御されている。さらに、HRは神経体液性因子により規定されるのみならず、HR自体が心機能に直接的な影響をもつ。心機能が低下した心不全患者(HFrEF)における心拍数の増加が予後の悪化と相関することが多く示されている。90%以上の患者において基礎治療薬としてβ遮断薬が投与されていたSHIFT試験では、安静時心拍数が大きいほど、心血管死や心不全による再入院が多いことが示された。

 交感神経活性を抑制するβ遮断薬は、心拍数低下・心収縮力抑制による心筋酸素需要低下をもたらすとともに、カテコラミン増加によるレニン・アンジオテンシン系活性化を抑制し、後負荷・前負の軽減、さらに心筋リモデリング抑制に作用する。結果として心保護効果をもたらし、心機能が低下した心不全患者において生命予後の改善効果を示すことが多く示されている。一方、イバブラジンは洞結節細胞のIfチャネルを阻害することより心拍数を低下させる薬剤である。本薬剤は心収縮能には影響を与えない特徴がある。左室駆出率35%以下で、かつ安静時心拍数70/分以上の症候性慢性心不全患者を対象としたSHIFT試験は、心機能が低下した心不全患者におけるイバブラジンの予後改善効果を示した。本試験の結果は、洞調律のHFrEF患者において心拍数を低下させることが有効な治療ターゲットとなることを示している。

 心不全患者の治療管理では様々な観点から薬物治療を実施する必要がある。上記のとおり、特にHFrEFにおける心拍数の上昇は予後とも関連する重要な管理指標となる。近年、循環器領域ではデバイス治療やカテーテル治療などの非薬物治療が発展する一方で、本邦での高齢化社会は着実に進んでおり、イバブラジンを含めた薬物治療の確立は重要な課題である。本講演ではFantastic Four時代における実臨床における心不全患者の心拍数管理について考えてみたい。

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