日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S35-2
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シンポジウム
心不全治療におけるARNiとMRAについて
*大谷 直由
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抄録

近年、社会の高齢化に伴い、心不全が世界中で増加し、心不全パンデミックと呼ぶべき状況が進行している。これまで、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)の治療は、ACE阻害薬/ARBとβ遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の3剤を中心とした薬物療法が推奨されてきており、ジギタリスと利尿剤のみで管理していた時代と比較すると格段に進化してきた。最近、それらに加え新たな心不全治療薬として、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNi)、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬が加わり、2021年度になり「急性・慢性心不全診療ガイドライン 2021」が改訂された。β遮断薬・MRA・ARNI・SGLT2阻害薬の4つの薬剤は、これからの心不全治療の中心を担う4剤であり、「fantastic four」と総称されている。このセッションでは、この「fantastic four」について議論を進めるが、この講演では、特に新しく心不全治療薬として登場したARNiと第三世代のMRAである2剤について概説する。 ARNiはネプリライシン阻害作用をもつサクビトリルとARBであるバルサルタンとを1:1で複合した薬剤である。心不全治療で第一選択とされていたACE阻害薬/ARBを使っても効果が十分に得られなかった場合に、切り替えて使用することが推奨されている。すなわち、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の阻害に加え、ナトリウム利尿ペプチドの増強作用が追加されると考えられる。ARNiは2015 年にHFrEFを適応疾患としてFDAに認可され、その5年後の2020年に慢性心不全を適応として日本でも承認された。2015年以降さまざまな臨床試験の結果が集積されつつある。もう一つは、従来より心不全治療に用いられていたMRAである。現在までにミネラルコルチコイドを抑制する第一世代MRAであるスピロノラクトン、第二世代であるエプレレノンの心不全患者に対する有用性は明らかであった。第三世代のMRAはステロイド骨格を有しないこと、MRAの投与の障害となっていた腎障害や糖尿病患者にも投与が可能と考えられており、これまで心不全患者への投与の妨げとなっていた副作用が軽減されていることが大きな特徴である。2018年にエサキセレノンが高血圧症の治療薬として、2020年にフィネレノンが糖尿病性腎症の治療薬として、それぞれ日本で承認申請された。

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