日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S31-3
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シンポジウム
国内外におけるカンナビノイド規制の現状
*松本 俊彦
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抄録

カンナビノイドとは、大麻草に含まれる炭素数21の化学化合物の総称であり、大麻草の葉や種子皮に蓄積し、茎、根、種子にはほとんどないとされている。大麻草には104種類ものカンナビノイド成分が含有されているが、なかでよく知られているのは、マリファナの主成分で有名なテトラヒドロカンナビノール(THC)、それから、カンナビノール(CBN)とカンナビジオール(CBD)である。多数あるカンナビノイドのなかで、向精神作用を成分はTHCのみとされており、1961年の「麻薬に関する単一条約」によって国際的な規制植物となっている。しかし、歴史的に見ると、1925年以前には、欧米や日本において大麻チンキという医薬品として販売されていた。そして、1970年代以降、マリファナ合法化の草の根運動と人道的使用の観点から医療用大麻の規制緩和を求める声が次第に大きくなり、1996年の米国カリフォルニア州における医療用大麻合法化を契機として、世界各国で医療用大麻合法化の動きが加速した。今日では、ウルグアイやカナダ、米国の一部の州などでは嗜好用大麻の合法化がなされており、欧州の多くの国においても、個人の嗜好用使用に関して非犯罪化が進められるなど、規制緩和の動きは国際的なうねりとなっている。しかし一方のわが国では、第二次世界大戦のGHQ(連合国総司令本部)占領時下の1948年に大麻取締法が制定されたことにより、大麻草の栽培は都道府県の知事の許可制となった。大麻取締法の第1条は、カンナビノイドを多く含む花穂や葉の利用は、全面禁止され、第4条によって医療目的の利用は医師も患者もできない状況にある。のみならず、THC成分0.3%以下という産業用の品種であっても、薬物乱用防止の観点から都道府県の知事免許の交付を受けて栽培することがきわめて困難な状況である。そうしたなかで、最近になって、わが国では、大麻成分由来の医薬品「エピディオレックス」の難治性てんかんに対する臨床治験を実施すべく法整備が進められている。これは大きな前進といえるものの、同時に、これまで大麻に関しては存在しなかった使用罪創設の動きも進められている点は、明らかに国際的な潮流に逆行しているといえるであろう。今回の発表では、国内外のカンナビノイド規制の状況について概説するとともに、薬物依存症治療を専門とする精神科医の立場から、わが国における大麻規制の課題について私見を述べたい。

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