日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-S31-1
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シンポジウム
エンドカンナビノイド・システム
*上田 夏生
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抄録

大麻(マリファナ)は乱用薬物の一つであり、大麻草の栽培や所持等は大麻取締法で厳しく規制されている。大麻には数十種類以上のカンナビノイドと総称されるユニークな化学物質が含まれており、代表的なものとしてΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)がある。1990年にTHCと特異的に結合するGタンパク質共役型受容体のcDNAがラットの脳からクローニングされ、カンナビノイド受容体CB1と命名された。今日では、大麻の精神活性作用は、主としてTHC がCB1受容体を介して発揮することが明らかになっている。一方、CBDは近年、難治性てんかん治療薬として欧米で承認されたが、CB1には作用せず、別の作用機序が想定されている。

 その後、CB1受容体に対する内在性作動物質が探索され、不飽和脂肪酸の一つであるアラキドン酸のエタノールアミド(アナンダミド)とグリセリルエステル(2-アラキドノイルグリセロール、2-AG)がそれぞれ1992年と1995年に同定された。両分子を合わせて内在性カンナビノイドを意味する「エンドカンナビノイド」という用語が定着しているが、化学構造上はカンナビノイドではなく、あくまでも脂肪酸誘導体である。エンドカンナビノイドは、外から動物に投与すると、カンナビノイドの四徴である自発運動低下、鎮痛、低体温、カタレプシー誘発等の症状を呈するが、体内では必要に応じて局所的に生合成され、作用後は速やかに分解されると考えられている。カンナビノイド受容体(中枢型CB1と末梢型CB2)とエンドカンナビノイド(アナンダミドと2-AG)、さらにはエンドカンナビノイドの合成酵素と分解酵素等を合わせて「エンドカンナビノイド・システム」と称され、脂質メディエーターによる情報伝達系の一つに位置付けられる。

 エンドカンナビノイドの体内レベルは合成酵素と分解酵素の活性の強さで調節されることから、該当する酵素の遺伝子を同定し、酵素の性状を解析することはエンドカンナビノイドの生理的役割を解明する上で重要であり、医薬品の開発にも貢献する。本演題では、アナンダミドの代謝酵素に関する演者のグループの研究成果を含め、動物組織におけるエンドカンナビノイド・システムの概要を紹介する。

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