日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第43回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 43_3-C-O09-4
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一般演題 口演
High-throughput screeningで見出した新規NF-κB抑制性化合物の動物モデルにおける抗炎症作用の検討
*馬場 洋行細矢 匡近藤 佑真石田 良典初澤 早貴影近 弘之保田 晋助
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抄録

【目的】Nuclear factor-κB (NF-κB)は炎症応答に対して中心的役割を果たす転写因子である。一方で、細胞生存、増殖、接着、及び血管新生など生理的機能も持つため、直接NF-κBを阻害する薬剤の臨床応用は進んでいない。我々は、NF-κB レポーター細胞を用いてcell-baseのHigh-throughput screeningを実施し、約15万個の化合物からNF-κBを抑制する有望な化合物を見出した。このうち、1H-pyrazolo [3,4 d] pyrimidin-4-amine誘導体(INH #1)は、THP-1とリウマチ滑膜線維芽細胞において、サイトカイン、ケモカイン産生を抑制することを報告した (Hosoya T. Front Pharmacol. 2020)。今回、動物モデルに対して、INH #1の炎症抑制効果を検討した。

【方法】INH #1は難溶性のためSBE-β-CDに溶解して動物実験を実施した。C57BL/6Jマウスに、腹腔内投与(IP)後、1時間後にLPS 100 μg/kgとD (+)-ガラクトサミン塩酸塩をIPし、その1.5時間後の血清中のTNFα濃度を測定した。また、DBA/1Jマウスにウシ由来2型コラーゲン (C2)と完全フロイントアジュバントから成るエマルジョンをday 1とday 21に免疫し、コラーゲン誘導関節炎 (CIA)を発症させた。Day 21の免疫の1時間前に、INH #1を4000 nmol IP後、以後20日間 INH #1を連投、関節炎スコアを評価した。最終日に血清を採取し、抗C2 IgG抗体を測定し、C2に対する血清INF-γ産生と脾細胞増殖(BrdU)アッセイを行った。

【結果・考察】INH #1は2000 nmol以上で用量依存性のTNFα産生抑制を認めた。CIAにおいて、INH #1は有意に関節炎のスコアを低下させた。また、抗C2抗体価の抑制は認めなかったが、C2に対するINFγ産生低下と細胞増殖抑制効果を認めた。よってINH #1は生体内で、TNFα阻害と細胞性免疫の抑制を介して抗炎症効果を発揮したと考えられた。

【結論】1H-pyrazolo [3,4 d] pyrimidin-4-amine誘導体は、動物モデルにおいても、炎症発症抑制効果を示し、今後、新規のNF-κB抑制性化合物の候補となる。

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