日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第84回大会
セッションID: PO-067
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15. 発達
高齢者の記憶と唾液中テストステロン濃度の関連における性差
*廣川 空美春日 彩花権藤 恭之大森 慈子増井 幸恵中川 威小川 まどか石岡 良子稲垣 宏樹
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抄録

本研究の目的は,唾液中テストステロン濃度と高齢者の記憶との関連に見られる性差について検証することである。本研究は2010年に実施したSONIC研究の70歳代の高齢者のうち,唾液サンプルを得ている参加者197名から,記憶検査としてMoCA (Fujiwara, et al., 2010) とADAS (本間ら,1992) を受けた対象者を選定した。さらに,糖尿病と脳卒中の既往歴がなく,HbA1C8.5%未満を選定基準とし,男性69名,女性53名(平均年齢=70.1±0.9)を分析対象とした。MoCA合計得点と,記憶,語想起,遅延再生などの下位尺度,ADASは再生と再認得点を用いた。記憶検査の得点と対数変換後のテストステロン値の関連について,性別に年齢とBMIを調整し,偏相関係数を算出した。結果,女性において,MoCA合計得点とテストステロン濃度との間に有意な負の関連が示された(r=-0.28)。下位尺度においても,女性では語想起得点(r=-0.32)と遅延再生得点(r=-0.29)で負の関連が示された(全てp<0.05)。先行研究と同様に(Bojar, et al., 2017; Thilers, et al., 2006),閉経後の高齢女性にとって,テストステロンと記憶能力の低下の関連が示唆された。今後は対象者数を増やし,縦断的な検証が求められる。

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