1980 年 33 巻 4 号 p. 259-267
食生活分析における対象相互の類似性の指標化は, 主に類似率による側面から探求されてきた。そこで著者らは距離測度による類似性の指標化と対象の空間布置の再現を試み, その妥当性と資料への適用範囲を検討した。
1) 対象をn次元空間内の位置ベクトルととらえると, 類似率は位置ベクトルの「方向」のみに関与し, 「長さ」に関する情報を表わしえない。したがってこれら2種の情報を含む距離測度による方法のほうが適切であると考えられた。
2) 類似率では資料における対象群の異質性・同質性が前提とされたが, 距離は座標の原点の取り方に依存しないのでいずれの場合にも有効であると認められた。
3) 資料への適用結果から, 国際食糧消費における地域構造ならびにわが国の食物摂取における地域構造の一端を知ることができた。また対象の空間布置を再現して背後に潜む構造を解明する場合, パターン間距離による方法より対象相互の距離とMDSによる方法のほうが適切であると考えられた。