栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
貯蔵中の米の品質変化
穀類の水中貯蔵に関する研究 (第4報)
満田 久輝河合 文雄山本 愛二郎大村 芳子
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1971 年 24 巻 4 号 p. 216-226

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抄録

プラスチック積層フィルムで包装した米穀類 (籾, 玄米, 精白米) を約9℃~13℃の水中に保存し, 梅雨期, 夏期, 冬期を経過した時点でその品質変化の程度を種々の化学成分含量および生物活性変化の様相, ならびに物性試験, 食味試験などによって調査した。その結果,
(1) 積層フィルムによる水遮断性は完全であり, 1カ年間を通じての水分変化は0.3~0.5%増であった。
(2) 脂肪, でんぷん質, タンパク質, 有機酸, ビタミンB1など種々の化学成分変化は極めて緩徐で, 従来の低温倉庫での保存と同等の効果を示した。
(3) 水中貯蔵米の発芽率, カタラーゼ活度, パーオキシダーゼ活度などの生物活性は1カ年後においてもほとんど失われなかった。
(4) 古米臭の指標としての揮発性カルボニル化合物, 炊飯特性, テクスチャーなどの測定結果は古米化の進行が水中区では非常に緩徐であることを示している。
(5) 7カ月貯蔵後の精白米について行なった食味試験の結果, 水中区は外観, 香り, うま味, 粘り, 硬さ, 綜合評価のすべてにおいて基準の低温米とほとんど差がないと判定された。
(6) CO2ガス封入区は脂肪およびビタミンB1含量変化の防止, パーオキシダーゼ活性の保持, 古米化の速度低下など多くの点でair区よりも優れていた。
以上, 水中での密封低温貯蔵法による米穀類の品質変化は極めて緩徐で, 従来の低温倉庫に管理されている状態と同等の効果のあることが確認された。
なお同一試料を引続き水中に貯蔵し経時的に品質変化を追跡中で, その結果は次報で報告する。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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