栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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牛乳の抗体蛋白質に関する研究 (2)
抗体蛋白質の性質
仁木 達祐川 金次郎
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1965 年 17 巻 6 号 p. 441-445

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抄録

分娩前乳牛の乳頭から, 百日せきジフテリヤ混合ワクチンを注入して得た人工免疫乳から, 免疫蛋白質γ-グロブリンを硫酸アンモニウム塩析によって分別し, 免疫蛋白質が経口的に摂取される場合に, 必然的に生ずる消化分解による免疫活性の低下および加熱処理による免疫抗体の熱変性にともなう抗体価の低下を知るために, まず試験管内でこの問題を検討し, 次のような結果を得た。
1. 分離されたγ-グロブリンは, 電気泳動的には95%純度のものであるが, DEAE-Sephadex A-25, 2.5×50cmカラム, 0.02M, pH7.0リン酸緩働液, 5ml/5min. の条件で溶出した場合には, 2つのピークに分離された。このγ-グロブリンは3~6γ窒素で百日せき菌10billionと凝集を示した。
2. γ-グロブリンを, 1/10濃度のヘプシンpH2.2およびトリプシンpH7.0で37℃, 3時間消化させ, 反応終了後, イオン強度を塩化ナトリウムて0.05~0.3Mまで段階的に上昇させながら, 上記同様のカラムに0.02Mリン酸緩衝液を5ml/5min. で流出させ, 5mlずつフラクションコレク々ーて採取した。各フラクションを自記分光光度計280mμで吸光度を測定し, ペプシン消化物は7区分, トリプシン消化物を5区分に分画した。
3. ペプシン消化ては, 反応混液の凝集価は約1/4に減少したが, トリプシン消化では凝集価の低下は認められなかった。各分画については, 消化分解によって分子量が小さくなったと考えられる区分の抗体活性は次第に減少したが, 1~3分画ではほとんど変らなかった。ペプシン処理による最終分画には活性が認められなかった。
4. γ-グロブリンの加熱処理では, 温度, 時間の上昇にともなって遠心沈殿蛋白量, すなわち熱変性量も次第に増加した。
63℃, 30分加熱処理では, 凝集価も約1/2に低下する。しかし, 70℃以上の処理で遠心沈殿したγ-グロブリンをpH10~11で再溶解したものの凝集価は溶液中のそれと同程度であった。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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