2021 年 50 巻 5 号 p. 301-304
心臓血管外科手術後の非閉塞性腸管膜虚血(NOMI : non-occlusive mesenteric ischemia)は診断や治療が難しい予後不良な疾患である.今回開心術直後にNOMIと診断,救命した1例を経験した.症例は77歳,男性.心不全を契機に入院し重度大動脈弁狭窄症と診断された.大動脈弁置換術を施行し,帰室1時間後から血行動態が不安定となり乳酸値の上昇や腹部に網状皮斑を認めた.造影CTを施行したところNOMIが疑われ,プロスタグランジン製剤の全身持続静脈投与を開始した.血管造影検査にて上・下腸間膜動脈に散在した血管狭窄部を認めたためNOMIと診断し,カテーテルを留置してパパベリン塩酸塩の選択的動注を開始した.その後,血行動態の改善を認め救命できた.NOMIの早期診断・治療を可能にするために,発症時のプロトコールを作成しておくことが円滑な治療のために重要と考えられた.