2020 年 49 巻 2 号 p. 62-66
症例は57歳男性,大動脈弁に疣贅を有する感染性心内膜炎の診断で抗菌薬投与を行っていた.入院7日後より心不全症状が出現,入院12日後,起座呼吸を認めた.弁破壊が急速に進行し,高度の大動脈弁逆流を認めたため当科紹介,緊急手術を施行した.弁輪部膿瘍を合併しており,感染巣の十分なデブリットマンを行い,機械弁による大動脈弁置換術を施行した.両側胸腔に大量の胸水を認めていたため,胸腔ドレーンを挿入した.人工心肺からの離脱は容易であり,機械的補助の必要なく手術を終了した.ICUへの移動を待機している間に,酸素飽和度の低下を認めた.酸素飽和度は進行性に低下し,最低で40%台まで低下した.術後胸部レントゲンで両側の肺水腫を認めたため,大量の胸水を除去したことによる再膨張性肺水腫と診断した.人工呼吸の調整では酸素化が維持できないため,Venovenous Extracorporeal Membrane Oxygenation(V-V ECMO)を装着した.酸素化の改善を認め,呼吸,循環動態が安定した.ICU入室後もV-V ECMOによる酸素化補助が必要であった.術後17日目,自己肺の酸素化の改善を認めV-V ECMOを離脱した.術後36日目,人工呼吸管理から離脱した.急速に悪化する両側再膨張性肺水腫の症例を経験した.呼吸管理にV-V ECMOは有用であったため報告する.