2009 年 38 巻 1 号 p. 56-59
症例は65歳,女性.胸背部痛,右下肢痛を自覚し近医受診した.腹痛増強し当院搬送となった.造影CT上,上行大動脈基部より右総腸骨動脈まで解離し偽腔は開存,上行大動脈径は48 mmであった.上腸間膜動脈(SMA)も解離し真腔は血栓化した偽腔により圧迫され閉塞していた.心エコー上大動脈弁閉鎖不全はtrivialで心嚢液は認めず,循環動態は安定していたが腹痛持続し,腸管壊死の危険性を考慮し緊急的に開腹した.腸管壊死は認めなかったが色調は蒼白で,大伏在静脈による左外腸骨動脈-SMAバイパスを施行した.術後鎮静化降圧療法を行い2日後上行弓部置換を施行した.腹部症状消失し術後46日後に独歩退院となった.