2020 年 49 巻 5 号 p. 243-252
[目的]大動脈弁位Carpentier-Edwards Perimount Magna弁(Magna弁)とSt. Jude Medical Trifecta弁(Trifecta弁)の移植しやすさ,術後早期弁機能,構造的劣化に関して検討した.[対象・方法]Magna弁151例,Trifecta弁103例を対象とした.術後早期弁機能は,術後10日目に施行した心臓超音波検査で計測した平均圧較差(m-PG)・大動脈弁口面積を体表面積で補正したAortic valve area index(AVAI)で評価した.[結果]Trifecta弁では,1例で,術中にステントがST接合部で圧迫され変形したため,閉鎖不全を生じ,再置換が必要であった.移植された人工弁のサイズと大動脈遮断時間には有意差を認めなかった.19 mm・21 mm弁では,Trifecta弁のほうがm-PGが低く,AVAIも大きかった.23 mm以上の弁では,m-PGが20 mmHgとなる症例は稀で,AVAIが0.85 cm2/m2 未満となる症例の頻度にも有意差を認めなかった.Magna弁では,10年以上経過した2例で弁尖石灰化による構造的劣化を来し,Trifecta弁では1例で,術後27カ月目に弁葉亀裂による閉鎖不全に対する再弁置換を要し,構造的劣化回避率には有意差を認めなかった.[結論]Trifecta弁では移植時にサイズ選択に注意が必要である.小口径弁では,Trifecta弁のほうが,術後早期弁機能は良好である.Trifecta弁では術後早期構造的劣化を生じた症例を経験し,注意深い経過観察が必要である.