AUDIOLOGY JAPAN
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小児人工内耳 (奇形) 例のコミュニケーションの成立と母親の養育態度の変化
森 つくり
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2006 年 49 巻 2 号 p. 202-211

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抄録

人工内耳術後の聴覚活用や言語獲得がすすまず, コミュニケーションや母子関係が安定しなかった小児 (内耳奇形) 例に術後9ヵ月後から指導を行った。指導と併行して, 母親の養育態度や障害受容の変化を縦断的に評定し, 変化に影響を与えた要因を検討して以下の知見を得た。1) 術後の聴覚活用や言語獲得がすすまない例では, 母親の育児困難感・負担感が高く, 自己効力感が低い等, 養育態度全般に悪影響がみられた。2)「聞くこと」だけに拘らず, 母子のコミュニケーション関係成立を優先して指導したことが, 母親の養育態度や障害受容の変化をもたらす契機になったと考えられた。3) 母子コミュニケーション関係の成立には, 聴覚活用と併行して, 身ぶりを積極的に使用したことが有効だった。4) 養育態度の変化によってもたらされた母親の働きかけの質的な変化が子どもの音声言語獲得とどのように関連するかを検討することが今後の課題であると考えられた。

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